
動画再生回数、最高120万回 「換え活」してYouTubeで先生に
「そんなの関係ねぇ!」と海パン一丁でテレビスタジオを暴れ回っていた小島さん。「ユーキャン新語・流行語大賞2007」のベスト10を受賞するなど、大活躍でした。それから15年、現在は子ども向けの教育系YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」で、子どもたちの心をわしづかみにしています。フィールドを換えながら、持ち味を大切にしている小島さんの「換え活」とは。
子どもと波長が合う。だったら子どもに向けてやってみよう
――大ブレイクが収束し、小島さんにとって厳しい時期がありました。その状態を「換えよう」と思ったきっかけがありましたか。
小島よしおさん(以下敬称略):たまたまライブを見にきていた関係者のお子さんが、始まってすぐに泣き出しちゃったんです。子どもはファンだと思っていたのでショックでした。「そんなの関係ねぇ!」が流行ったのも、子どもに人気があったからです。路線を換えなければと思ったきっかけです。
もうひとつ、現場で笑いのスペシャリストたちを見ていて、自分も得意分野を突き詰めなきゃ、と考えていたときでもありました。どうせ換えるならライバルが少ない土俵を目指そうという戦略もありました。
そんな時、僕をよく知る先輩が「子ども向けライブをやれば」って言ってくれたんです。子ども好きっていうこともあるし、何より、子どもと波長が合うことを先輩も感じていてくれたのかもしれません。
そして2011年、子ども向けライブを打ち出しました。
居場所を換えたら、「引き出し」が増えた
小島よしお:世間的には、消えるとか一発屋とか言われ、実際仕事の量も減ってきていました。なにか換えないと、という思いで子ども向けライブを始めましたが、この頃に引越しを決めたのも、同じように「換えないと」という強い気持ちからでした。
――住処を換えて、どんなことが変わりましたか。
小島よしお:引っ越して、一緒に遊ぶ人がガラリと変わりました。中目黒にいた頃は、付き合う人たちは芸人さんが多かったんです。下町に住んでいる人も周りにあまりいなかったですし……。
けれど、引っ越してからは、不動産屋さんや自転車屋さんなど近くに住んでる異業種の人と、接点を持つことが多くなりました。そうした人たちと付き合うのは、すごく刺激になります。知らなかった世界を覗けたりして、仕事でコメントを求められたときに、今までよりも引き出しが増えた感じはしますね。
子ども向けライブの開始と引っ越しが前後して起こって、それは大きい変化だったと思います。
コロナ禍で失うものがあり 新たな場所を得ることもある
――子ども向けのライブは、ブレイク中のYouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」※1や「小島よしおのピーヤの休日」※2とどのようにつながっていったのでしょうか。
※1 YouTubeチャンネルで配信中の、小学生に向けたオリジナルの授業。先生は小島よしおさん。
※2 学校の放課後や休日をイメージした「真面目に遊ぶ」チャンネル。エクササイズをしたり畑で野菜を育てたり。
小島よしお:子ども向けライブは、年に100回くらいやりました。そしたらコロナ禍。もちろんライブは自粛だし、学校も休校。そんな時、作家さんに「子どもの学力が落ちちゃうし、授業動画をやってみないか」って言われたのがきっかけで、始めました。僕は一応教育学部出身だから、まあ説得力もあるだろうし、って。
――ライブと授業動画はずいぶん違うようにも思われます。「教育」ということで工夫はありますか。
小島よしお:工夫かどうかわからないですけど、まず、自分が楽しんでいるのを見せることを、大事にしています。わかりやすい言葉を使ったり、大事なことは2回言ったり。音がなくても、映像だけでも面白く、ということはコンセプトとしてあります。背中に文字を書いてみたり、円周率の時はフラフープを使ったり。あとは時間があまり長くならないように気をつけています。
子供向けライブの延長のようなものが「ピーヤの休日」です。最初の回に子ども向けライブで歌っていた「ごぼうのうた」を歌いました。僕がごぼうが大好きだったもので、できた曲です。好きな野菜シリーズの歌はこれ以外にも、いくつもあります。「ピーマンのうた」「モロヘイヤのうた」……。
換えたら、ありがたみやそれを知らなかった自分に気づく
――歌のおかげで子どもの野菜嫌いが直ったというコメントがたくさんあるそうですね。そして「ごぼうが好き」だから「ごぼうのうた」が生まれる! 好きがそのまま曲になり、動画のネタになるって理想的ですね。
では逆に、授業動画やピーヤをやったから好きになったものはありますか。
小島よしお:そうですね。思えばYouTubeの授業動画をするようになって、初めて、教えるのが好きなんだとわかりました。授業に人気があるのは、台本を書いてもらっている作家さんの力もあるんですけど、僕の教え方もあると思います。教えることは得意じゃないと思っていたんですが、やってみたら教えるのも好きだなと。
YouTubeは自分のやりたいこと、好きなことを表現できます。見た人に僕の得意なこと、好きなことをわかってもらえて、で、そこから仕事が来ることもあるんですよね。
――他にテレビとYouTubeどんな違いがありますか。
小島よしお:YouTubeでは、ファンからの声が全体的に届きやすくなっていますね、しかもダイレクトに。僕も、いただいた声にハートをつけたりします。また動画は空き時間に、場合によってはひとりで作るんです。こういうことを経験してテレビの仕事をすると、スタッフさんのありがたみが、前より感じられられるようになりました。
まとめ
テレビでの大ブレイクの先に待っていたのは深い谷でした。小島さんは活躍の場やターゲットを「換え活」しながら、その谷を登っていきます。新しい人と交わり、それがまたチャンスにつながる。小島さんはこう言っています。「換わるのは好き、換わった先にはいいことがあった気がする」。
次回は人生を遡ります。コントが好きの大学生が、あっという間に全国区のタレントになった、その成功譚を伺います。コントユニットが解散し、小島青年はたったひとり、世間の荒波に投げ出され……
■プロフィール
小島 よしお(こじま よしお)
1980年生まれ。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2007年に「そんなの関係ねぇ! 」でブレイク。
YouTubeの教育チャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」で再びブレイク。「時計のよみかた」をはじめとする時計シリーズの動画は計100万回再生を突破。